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本のあらすじ、感想を書き留めるブログ

西村ツチカ『ちくまさん』

 

 

感想

 

本書の主人公であるちくまさんは、伝票入力という「暗い画面に文字を打つだけの簡単なお仕事」をしている。

おそらく職場では番号で呼ばれ、同僚である「5番」のミスを尻拭いすることもある。

 

そんなちくまさん、仕事の息抜きは小説を読むことで、小説のなかのエキサイティングな世界と、白黒のインクで描かれるつまらない仕事の世界を横断しながらうまく心のバランスをとっていたのですが、ある日「5番」の職場脱走を契機に自身も様々な仕事の旅に出るのでした。

 

小説世界で起きるようなエキサイティングな仕事を、ちくまさんはたくさん体験します。

仕事のおもろしさをどこに見出すのかは人それぞれですが、ちくまさんが、伝票入力の仕事を抜け出して体験する仕事の数々は、繰り返し同じことをする仕事とは真逆の、毎日何かしらの発見があるところが、面白いのかもしれません。

 

最終章「あしたのひと」で描かれるちくまさんは、様々な仕事の体験を経たことで、少し視野が広がったのではないか、と思います。

 

例え「簡単なお仕事」でも、何かしらの発見はあるはず。

それを見つけるのは自分次第であるということを教えてくれる作品なのかなと思いました。