村上春樹『騎士団長殺し』
あらすじ
妻に別れを告げられ居場所を失った肖像画家の「私」は、かつて名画家が住んでいた家に暮らすことになる。そこには「騎士団長殺し」という絵が隠されていて…。
感想
魅力的な登場人物と、謎が謎を呼ぶストーリー展開にどっぷり浸ることができて幸せな1か月でした。
この小説の良いところは突っ込みどころがありすぎるところで、村上春樹が好きな人も嫌いな人も、読書会を開いて検討するとより楽しめそうな気がします。
色んな視点、色んな解釈で語る余地のある作品。気になるところをいくつかあげてみます。
主人公のもとに集う女性達について
主人公、これでもかというくらいもててました。妻と別れた後に二人の女性と不倫するし、謎の少女、秋川まりえも主人公にだけ心を許すし、読んでるこっちが腹たってくるくらい。
典型的な村上春樹的主人公ですね。
創作の考え方
肖像画家という設定上、主人公は物語の過程で絵を描いていくのですが、村上春樹の作品作りの考え方に重なるところがあるのかな、と思いました。その点は、ファンにとって読みごたえのある作品だと思います。
謎の回収について
最後まで解決していない事柄がいくつかありました。例えば秋川まりえの父親が盲信している宗教団体や、「顔のない男」の絵を描くという約束について。
書評をいくつか読みましたが、そういった謎が残っている以上、みなさん続編を示唆されていました。
個人的には、続編はないだろうと思います。