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本のあらすじ、感想を書き留めるブログ

サンテグジュペリ『星の王子さま』

沙漠の真っ只中に不時着した飛行士の前に、不思議な金髪の少年が現れ「ヒツジの絵を描いて…」とねだる。少年の話から彼の存在の神秘が次第に明らかになる。バラの花との諍いから住んでいた小惑星を去った王子さまはいくつもの星を巡った後、地球に降り立ったのだ。王子さまの語るエピソードには沙漠の地下に眠る水のように、命の源が隠されている。生きる意味を問いかける永遠の名作の新訳。

(Amazonより抜粋)

 

星から星へ旅をする王子さまによる記憶をめぐるお話。名言、名エピソードが多すぎて、読んでない人には今すぐ読んでとしか言えません。最後の「ぼく」と王子さまのやりとりには思わず涙が出そうになりました。

 

この本は買ったままずっと本棚にしまってあったのですが、フォローさせていただいてる方がミュージアムに行かれてるのをみて、手に取りました。きっかけを作ってくださり感謝です。

 

有名作すぎて、たくさんの方が翻訳していますが、私が読んだのは池澤夏樹さん訳。後書きから、岩波少年文庫で出版された初代翻訳版へのリスペクトも垣間見れるので、新訳で読み直したい方にもオススメできるかと。

 

子ども向けの本とあなどってはいけない。深読みしようと思えばいくらでも深読みできるようになっていて、サンテグジュペリの執筆背景(第二次世界大戦でフランスが占領下にあい、アメリカに亡命した)などを考えると、痛切な戦争批判、人間批判がみてとれます。

美しいストーリーですが、世のなかに照らし合わせながら読める作品です。

 

 

星の王子さま (集英社文庫)

星の王子さま (集英社文庫)

 

 

 

 

 

 

マーヤ・ヴァン・ウァーグネン『マーヤの自分改造計画』

学校ではどこで誰と過ごすか、または過ごさないかで属すグループが決まる。
あたしは生徒のなかでは最下層、目立たないグループに分類されてる。 自分より階層が上の誰かに餌食にされないかぎりは…。ある日、パパが古本屋で『ティーンのための人気者ガイドブック』を見つけてきた。 1951年に書かれたその本には実現しそうにないこと、つまり格づけを上げる方法が書いてあった。私は実験を始めることにした!
アメリカに暮らす現代のティーンが60年以上前の古本を手に、
髪形からファッション、身のこなしまで自分磨きに奮闘!
本当の「人気者」とは何かに気づくまでの、チャーミングなノンフィクション!

20か国で刊行!
ニューヨークタイムズ・ベストセラー!

(Amazonより抜粋)



60年以上前のガイドブックを元に人気者になろうと奮闘する主人公の日記を元にしたノンフィクション。

ダイエットや髪型、歩き方など、本に書いてあることをそのまま実践し、新たな自分を切り開いてみせた主人公に拍手したい気持ちになりました。

 

まず、語り手であるマーヤの文章がユーモアがあってとてもいい。そしてアメリカの中でもテキサス州ブラウンズビルという、メキシコの国境付近の町に住む中学生のリアルな生活(学校が突然ロックダウンされたり、授業中に抜き打ち麻薬検査があったりする)が書かれている点も、興味深かった。

 

日本の子供たちも悩みの種であろうスクールカースト。自分に自信を持てない子、人気者になりたいけど何をすればいいかわからない子、友達を作るのが下手な子にこそ読んで欲しい一冊です。

 

 

マーヤの自分改造計画――1950年代のマニュアルで人気者になれる?

マーヤの自分改造計画――1950年代のマニュアルで人気者になれる?

 

 

 

 

石田衣良『1ポンドの悲しみ』

数百キロ離れて暮らすカップル。久しぶりに再会したふたりは、お互いの存在を確かめ合うように幸せな時間を過ごす。しかしその後には、胸の奥をえぐり取られるような悲しみが待っていた―(表題作)。16歳の年の差に悩む夫婦、禁断の恋に揺れる女性、自分が幸せになれないウエディングプランナー…。迷い、傷つきながらも恋をする女性たちを描いた、10のショートストーリー。

(Amazonより)

 

30代の恋愛をテーマにした短編集。東京に住む同年代の女性が読めば共感できるかもしれない。私には少しキラキラしすぎて、全編ドラマみたーいと思いながら読みました。

 

印象に残ったのが、本を読む男としかうまくいかない女性が主人公の「デートは本屋で」という作品。相手がどんな本を読むか探りながら「この人、合格だ」と呟くシーンがあって、こういう人多そうだなあって思いました。

私も好きな作家、読む作家で人のこと判断しがちだったので。最近はその考え方自体が思い上がりで、本なんて読んでも読まなくてもどっちでもいいよ、というスタンスです。

 

パートナーの条件に「本を読む人」という縛りを設けることで、出会いの可能性を狭めている感じがとてもしました。

 

 

1ポンドの悲しみ (集英社文庫)

1ポンドの悲しみ (集英社文庫)

 

 

 

島本理生『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』

特別じゃないわたしたちの、特別な日常
『ナラタージュ』『Red』の著者が描く、新たな恋愛小説。

「どこへ行きましょうか」 「どこへ行くか」
30歳の私は、あの日、夕方の春の海辺で、どこへ行けるか分からない恋を始めた。限られた時間の中にいる男女の行く末を描いた、渾身の恋愛小説。
年上のエンジニア・椎名さんと仕事先で出会った知世。美味しいものを一緒に食べる関係から、少しずつ距離が近くなっていったある日、椎名さんは衝撃の告白をするが……。

(Amazonより)

 

ワーカホリック気味な主人公と、ある問題を抱えた男性の恋愛小説。食事、旅行のシーンを通して、人との距離間の取り方、生き方を模索してる姿が印象に残りました。

 

島本理生さんといえば、デビュー作から一貫して恋愛小説を書かれていて、主人公の性格が控えめなところは今回も同じ。ただ食事と旅行シーンがとても多いので、ガイドブックとしても楽しめるし、主人公の友達二人がとてもいい子達で、どちらかというとこっちに感情移入しました。

 

わたしたちは銀のフォークと薬を手にして

わたしたちは銀のフォークと薬を手にして

 

 



米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』

小市民を目指す小鳩君と小山内さんのコミカル探偵物語

小鳩くんと小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに2人の前には頻繁に奇妙な謎が現れる。消えたポシェット、意図不明の2枚の絵、おいしいココアの謎、テスト中に割れたガラス瓶。名探偵面をして目立ちたくないというのに、気がつけば謎を解く必要に迫られてしまう小鳩くんは果たして小市民の星を掴み取ることができるのか? 新鋭が放つライトな探偵物語。(Amazonより)

 

米澤穂信さんは「青春小説の書き手」として評価されている方で、本書は複数あるシリーズの中の一つになります。シリーズもので『夏期限定トロピカルパフェ事件』『秋期限定栗きんとん事件』と続くのですが、題名だけでときめいてしまうのは私だけでしょうか。

 

本格というよりも、日常に潜む謎や事件を論理的に解決するライトミステリですいすい読めましたし、主人公二人の過去は、まだ明らかにされていない部分もあるので、続きがとても気になりました。

 

強いて難を言うなら、主人公二人が主張する「小市民を目指す」という考え方が、少し恥ずかしいし中二病ぽいところ。けどまあ、それもご愛嬌というか、現役中高生のときに呼んでいたらどハマりしてただろうな。

 

 

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

 

 

 

 

 

 

川上未映子×穂村弘『たましいのふたりごと』

作家・詩人として日本文学の最前線を疾走する川上未映子と当代一の人気歌人穂村弘が、人生のワンダーを求めて、恋愛・創作・生活等々を縦横無尽に語りつくす!

(Amazonより)

この本を読む直前に、川上未映子の、村上春樹へのインタビュー集を読んでいて、なんて話し上手、聞き上手な方なんだろうなあとおもっていましたが、この本もやはり期待を裏切りませんでした。

 

村上春樹を相手にしていたときは、彼女がインタビュアーという立ち位置だったので、いかに話を聞き出すか、村上作品をインタビューの中で読み解いていくか、が大事で肩に力が入っている印象を受けました。

 

ただ今回は、あらかじめきめておいたキーワードにそって二人が話をするという形式なので、もう少しフランクというか、お兄さんと好きなものを見せ合うような親密さを感じます。

 

お題とされている75のキーワードは、おめかし、香水、永遠、お別れ、眠り、死、など…。

Amazonでは、一つのお題に長くても5ページ、短くて2ページくらいしか、割いていないので、トークが尻切れとんぼで終わってしまっている、と批判されていましたが、特にそういう風には感じませんでした。

ただ、話題が文学、思想というよりも日常生活よりなので、物足りないと感じた人はいたかもしれません。

 

たましいのふたりごと (単行本)

たましいのふたりごと (単行本)

 

 

 

スティーブン・チョボスキー『ウォール・フラワー』

【あらすじ】

チャーリーは15歳。美人な姉と、フットボール選手の兄とはそれなりに仲がいい。高校で知り合ったパトリックとサムは初めて心から愛した親友だった…。

大人も子供も傷つき、傷つけながら人生を生きる。最高にクールな青春小説。

 

アメリカの10代の子達を対象にした「YA小説」というジャンルが私は結構好きなのですが、この作品は花丸満点。
エマ・ワトソンエズラ・ミラーが出ている映画もよかったですが、原作マジで最高でした。

 

物語を通して描かれるテーマの一つに「暴力」があります。

物理的な暴力であれ、性的な暴力であれ、チャーリーを取り巻く家族、友人たちは、かならず何かしらの暴力の被害者であり、加害者です。

例えばチャーリーの姉は、妊娠したことを彼氏に伝えると、突き放され中絶を余儀なくされます。また、親友のパトリックは、恋人だったブラッドに「ホモ野郎」と罵られ、殴りあいの喧嘩になってしまいます。チャーリーは彼女たちに寄り添い、ハグをし、話をするのですが、実は主人公のチャーリー自身も例外ではなく、精神科にかかるくらいの、ある過去が隠されているのでした。

 

この小説は、なぜチャーリーがこれほどまで不安定な子なのか、人と関係性を築くのが下手なのかがカギとなっていますが、裏を返せば、チャーリーが自分自身で、また、周囲の人間の力を借りて答えを見つけ、乗り越える話でもあります。

そして、読者はチャーリーの書く手紙を通して、その過程である1年間を追体験することができるのです。

 

 

ウォールフラワー (集英社文庫)

ウォールフラワー (集英社文庫)