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本のあらすじ、感想を書き留めるブログ

松浦理英子『最愛の子ども』

【あらすじ】

<パパ>日夏、<ママ>真汐、<王子>空穂。

女子高生三人が作り上げる疑似家族と、それを愛でる「わたしたち」。

不思議な三角関係が築き、そして壊れるまでを描く、著者4年ぶりの傑作長編。

 

松浦理英子さんは本当に寡作な方で、長いキャリアの割に新作がなかなか出て来なくてやきもきするのですが、いつも新しいことにチャレンジし、ハズレが一作もないという恐るべき作家です。

 

今回も、「わたしたち」という不特定多数の語り手が、真実か虚実かわからないエピソードを積み重ねるという変わった手法でとても読み応えがありましたし、同性愛の一言で済ませられない少女達の関係性に、心臓を搔きむしられました。

 

こんな奇跡のような一冊を読めるなら、いくらでも待ちますという気持ちでいっぱいです。

 

 

 

最愛の子ども

最愛の子ども

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かんべみのり『入社1年目からのロジカルシンキングの基本』

【内容】

本書の主人公は、「ヤングかんべちゃん」。

20代をフリーター、海外放浪をしながら過ごし、キャリアのことはあまりちゃんと考えていませんでしたが、28歳のときに初めてあるイベント運営会社の正社員として採用されます。

最初の仕事はニッポン元気エキスポというイベントの企画運営。

キックオフミーティング、企画書作成、課題策定からの解決策立案、報・連・相…。仕事を進める上で立ちはだかる問題をバリバリキャリアウーマンの水谷さんと解決していきます。

 

この本のポイントは、作者の伝えたいことがすべて「ヤングかんべちゃん」が進めているイベント運営準備に置き換えられていること。

フレームワークやマトリクスの考え方など、言葉だけではとっつきにくいですが、具体的な使用例が描かれているのでイメージが湧きやすく、とても分かりやすいと思いました。

 

すべてを鵜呑みにする必要はないですが、キャリアや仕事のポイントを考えるきっかけのひとつとして、レベルアップしたい社会人の方にオススメです。

   

 

 

 

 

 

伊藤朱里『稽古とプラリネ』

【あらすじ】29歳フリーライターの主人公は、雑誌のコラム連載のために女性の習い事を取材することに。
10年付き合っていた彼氏との別れ、親友へ感じてしまう劣等感、過去の苦い出来事との折り合いのつけ方…。主人公と同年代の読者に向けた「女子のリアル」の物語。

 

伊藤朱里さん、初めてでしたが、とにかく共感しっぱなしで楽しく読めました。

思い出したのが柚木麻子さんの『本屋さんのダイアナ』、『ナイルパーチの女子会』で、この辺が好きな方にはとてもオススメです。

 

気になったのは、女は年をとると若い世代を憎み、お局化するという考え方で、どうしても悪く描かれていたこと。

「女性には賞味期限があるから」というセリフが出てくるけど、結局救いがないじゃんと思ったし、もう少し掘り下げて欲しかったです。

 

 

 

稽古とプラリネ (単行本)

稽古とプラリネ (単行本)

 

 

 

オカヤイヅミ『おあとがよろしいようで』

「死ぬ前に食べたいものは何ですか?」という問いは、飲み会なんかでは割と定番の質問かもしれません。

例えば私の場合は梅干し入りのおにぎりとお味噌汁で、食べた後、眠りに落ちるように死ねたら幸せだなあとぼんやり考えていますが、そもそもこの本の作者、オカヤイヅミさんの場合、「死ぬの怖くなくなるものを食べたい」と言ってしまうほど、死の恐怖がベースにあるのでした。

本書は死恐怖症の作者が、15人の作家たちに「死ぬ前に食べたいものは何か」という問の答えを聞いてまわるコミックエッセイです。

彗星が落ちてくると仮定して、食欲がなくなることを見越した胃に優しいメニューを選択する人、純粋に自分の好物を食べる人、あえて食べたことのないものにチャレンジする人…。

皆さん回答が千差万別で、話は自分の死のシチュエーションにまで及びます。

死ぬ直前まで小説を書き続けるかという問いも、当たり前のように書くという人もいれば、「書かなくなったらフェードアウトしたい」と言ってる人もいて、思わず笑ってしまいました。

食べるのが好きということは、生きるのが好きということ。死ぬ前に食べたいものを考えるということは、生き続けたいと願うことなのかもしれません。

 

 

 

おあとがよろしいようで

おあとがよろしいようで