20代OLが読書感想を書き留めるブログ

本のあらすじ、感想を書き留めるブログ

山崎ナオコーラ『ネンレイズム/開かれた食器棚』

“おばあさん”になりたい、自称68歳の村崎さん、未来でなく“今”を生きたい紫さん、“徐々に”年をとりたいスカート男子・加藤くん。町の公民館の「編み物クラブ」に通う未来は未定!高校3年生の冬ものがたり。

 

 

「ネンレイズム」は年齢、「開かれた食器棚」は出産について、 社会を通して自然と刷り込まれてしまった「常識」を疑問視してくれる、素敵な小説でした。

 

特に「ネンレイズム」の主人公、村崎紫ちゃんは、山崎ナオコーラさんにしか書けない可愛さが出ていて、この子が編み物を通してお年寄りとやり取りするシーンがとても良い。彼女がどんな大人になるのか気になったし、いつか続編を書いて欲しいです。

 

ただ、少し難を言うと、小説のなかに、作者が本当に伝えたいだろうことが上手く溶けこんでいなくて、違和感を感じるシーンがありました。

例えば高齢出産について書かれているところ。キャラクターが思っていること、というよりも、作者自身の主張のように感じられて、少し冷めてしまったし、そこだけが残念に思いました。

 

ネンレイズム/開かれた食器棚
 

 

 

山崎ナオコーラ『ボーイミーツガールの極端なもの』

管理栄養士を目指す大学生は野球選手との結婚に憧れ、
子育てを終えた中年の女性がファッションデザイナーと巡り合う。
引きこもりニート松田聖子に恋慕し、
その弟は誰に対しても自分から「さようなら」を切り出せず、
兄弟の父親は妻と再会する。
人と接するのが苦手な少女は思いがけず人気アイドルになって、
アイドルの付き人は嫉妬に苦しみ、
三流俳優は枕を濡らす。
植物屋の店主は今日も時間を忘れてサボテン愛に耽る。

年齢も性別も境遇も異なる男女が出会い、恋をし、時には別れを経験する。
「絶対的な恋なんてない」
不格好でも歪でもいい、人それぞれの恋愛の方法を肯定する連作小説集。

人気多肉植物店・叢Qusamuraの店主・小田康平が植物監修を務める。

(Amazonより)

 

山崎ナオコーラさんは、デビュー作『人のセックスを笑うな』で王道といえる「ボーイミーツガール」物の作品を書いたけれど、本作は、「ボーイミーツガール」の枠に収まらない、「極端」な恋愛がたくさん描かれています。

 

各作品の語り手は全員違いますが、サボテンを通して世界観がゆるーくつながっていて、登場人物の意外なその後がわかるのも楽しめました。

 

サボテンに沢山の品種が存在するように、人の数だけ恋愛の形が存在する。

そんな当たり前なことに気づかせてくれる素敵な作品集です。

 

 

ボーイミーツガールの極端なもの

ボーイミーツガールの極端なもの

 

 

 

 

山崎ナオコーラ『かわいい夫』

日々の暮らし。父との死別。流産。ふたたびの妊娠。
さまざまな出来事をとおして、 浮かび上がってくる、あたらしい結婚の形。
変化していく、作家のこころ。
毎日、少しずつ読みたくなる、結婚エッセイ集。
装画、みつはしちかこ
本書には、西日本新聞に連載されていたエッセイが44本、書き下ろしエッセイが48本収録されています。

(Amazonより抜粋)

 

『指先からソーダ』というエッセイを読んだのは随分前でしたが、山崎ナオコーラさんを取り巻く環境が大きく変化していることがわかります。

デビューして10年。文学賞は取れないし、本も売れない。どこで自分のモチベーションを保てばいいのか悩まれていたことも、この本では素直に語られていました。

 

また、書店員の旦那様や、頑固だけれど憎めない父親について書かれた文章は愛に満ちていて、読者を幸せな気持ちにさせてくれます。

 

一番好きな本かもしれません。

 

かわいい夫

かわいい夫

 

 



益田ミリ『泣き虫チエ子さん』

会社で秘書をするチエ子さんと家で靴の修理をするサクちゃんは、仲良しの夫婦。生まれも育ちも性格も違う二人は、お互いを大切に思いながら日々を過ごして──。心温まるコミック

 

夫婦、恋人同士で暮らしたことがある人にとってはあるあるの宝庫で、チエ子さんとサクちゃんのやりとりを追いかけるうちに自然と自分のパートナーに思いをはせ、愛しい気持ちを抱いてしまう、そんな本です。

 

私は独身で、結婚、子供のあるなしの話題にナーバスになるほうですが、チエ子さんとサクちゃんには子どもがいないので、その辺ストレスなく読めましたし、二人だけの世界でとても素敵な生活をしていることに希望が持てました。

無理して子供を作らなくていい。自分達が幸せならそれでいいじゃないかと、言ってもらえたような気がするのです。

 

益田ミリさんは、日常生活のちょっとしたシーンを切り取りながら人生を描き、読者の共感を得ることを得意とされています。

例えば食事のシーン。ラーメン屋で餃子につけるタレを作りながら、チエコさんは幸せな気持ちになります。

 

お酢とラー油が多めのサクちゃん

サクちゃんの好みの分量を知っているのは世界中でわたしだけなんだってチエ子さんは思ったんです

 

幸せってなんだろう。そう考えたとき、こういう小さな気づきの連続が、結果的に幸せなのではないかということを教えられました。

 

泣き虫チエ子さん 旅情編 (集英社文庫 ま 22-4)
 
泣き虫チエ子さん 愛情編 (集英社文庫 ま 22-3)
 

 



 

雑記:読書垢をこじらせた話①

はじめに

私がTwitterで読書感想をつぶやくアカウント、通称「読書垢」をやり始めて1年と3カ月が過ぎようとしています。
Twitter上には同じようなアカウントを持っている人達がたくさんいて、フォローしたりされたりしながらごく少数ですがやりとりもさせていただき始めてよかったなと思いますし、これからも細々と続けていくつもりです。
ただ、もちろん人間同士のやりとりなので常にご機嫌というわけにはいかず、時にはモヤっとした気持ちを抱くこともあり「これはどういうことだろう」「この人はなぜこんな呟きをしちゃうんだろう」と悩むこともしょっちゅうでした。
この文章は、こじらせすぎた自分の気持ちを一度整理したくて書いたものです。

 

読書垢を始めた理由(本の話を聞いてくれる人がいない。)

活字離れという言葉があるくらいだから、本を読む人が少数派ということは周知の通りだと思います。例えば40人の教室の中で、図書室の本を毎日のように借りて読む子がいたとしても、クラスに1人か2人が妥当ではないでしょうか。

私の周囲(主に仕事場の人達)にも、読書を趣味としている人はあまりいませんし、なんとなくですが、例え好きでも言ってはいけない雰囲気を感じるのです。
恩田陸の『三月は深き紅の淵を』という小説の中に、とても共感できる文章があります。主人公は本好きであるがゆえに会社の会長の家に招待され、ある謎解きの依頼を受けるのですが、そこに集まった人達がみんな個性的な本読みなんです。

 

「だいたいですね、僕はここでこうして本の話してますけど、今の若者世代じゃ本の話なんてタブーに近いですよ。読んでても、恥ずかしくて、読書してますなんて言えない。『お前試験勉強してるか?』『全然だよ』っていうのと同じです」(p.95、96)

 

「日本の社会自体、本読む人間には冷たいんですよ。本読むのって孤独な行為だし、時間もかかるでしょ。日本の社会は忙しいし、つきあいもあるし、まともに仕事してるサラリーマンがゆっくり本読む時間なんてほとんどないじゃないですか。本なんて読ませたくないんだな、って気がする。』(p.96)

 

まさにこんな感じ。私が日常生活のなかで本の話をすることはほとんどありません。
ただ、同じように本が好きな人と友達になったり感想を伝えあったりしたいという思いはずっとあったので、読書垢はちょうどいいツールだと思いアカウントを作ることにしました。

 

アカウントを始めて驚いたこと①みんなブックオフで本買うことを隠さないね。

年齢を暴露すると私は今アラサーです。読書垢のメインの年齢層は中学生から20代前半なので、必然的に自分より年下の人達のツイートを眺めることになります。

若い子達のキラキラしたツイート(主に学校生活や自撮り写真.)には眩しすぎて慄くこともありますが、普段関わりのない年齢層の生活をのぞくのは楽しいです。
ただちょっと、ツイートを読んでモヤモヤすることもありました。それは「ブックオフで〜を買った」「図書館で〜を借りて読んだ」という言い回しのツイートがとても多いということ。
間違えないで欲しいのは、ブックオフで本を買うこと、図書館で本を借りることを非難したいわけではありません。本を新品で買うべきかについては私も思うところがありますが、とても根が深い問題だと思いますし、今の私には手におえないので今回は割愛します。ここで言いたいのは、「どこで入手したかをわざわざTwitterで発信する必要なくないか?」ということです。
今、全世界の人がTwitterをやっています。私の友達、同僚もやってますし、芸能人や企業、そして小説家の人もアカウントを持っている。
私はよく読んだ本の感想をツイートしますが、基本的には出版社や本の題名も明記するので、ごくたまに関係者(出版社アカウント、作者本人)にリツイートされます。彼らが定期的にエゴサーチしていることは想像に難くありません。
もし彼らが「ブックオフ〜」のツイートを見てしまったら…ということを考えると、いつもハラハラします。私が小説家なら、心身削って書いた作品の反響を知りたくて検索したのに安く手に入れて喜んでいる読者がいたら複雑な気持ちになるから。読んでくれてありがたいしとても嬉しい。でも、入手経路は知りたくなかったと思うだろうから。

 

でもね、「ブックオフ〜」のツイートをしてしまう気持ちも理解できるんです。

本は高い。定価だと文庫本でも500円以上とか普通にするし、海外文学のハードカバーなら2000円、3000円が当たり前で、なんならそのお金で一回飲みに行けちゃいます。

さらに言うと服や化粧品と違って、基本的に新刊書店はセールを行いません。

 例えば、本を年に100冊読む人がいるとする。好きな作家は売れっ子で、新刊もコンスタントに出す人だけれど、バイト代やお小遣いではどうしてもハードカバーに手を出せない。しょうがないから近所の図書館で予約したら50人待ちで、1年以上待たないといけない。貸し出しを待つ間、他の本を読みたいけどやはりお金がない。そんな時に何気なく入ったブックオフで、大好きな作家の未読の小説が108円で売られていた。しかも10冊も!

そんなシチュエーションなら、私もツイートしてしまうかもしれません…。

 

三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

 

 続きはまた今度書きます…。

 

春見朔子『そういう生き物』

千景とまゆ子。高校の同級生である二人は、10年ぶりに偶然再会し、思いがけず一緒に暮らし始める。
薬剤師の千景は、とある男との逢瀬を重ねながらも、定年退職した大学の恩師「先生」に心を寄せている。
叔母のスナックでアルバイトをするまゆ子は、突然家に尋ねてきた「先生」の孫とカタツムリの飼育を巡り交流を深めつつ、千景をそっと見守る。
すれ違いの生活ながら、長く離れていた二人の距離は徐々に縮まっていく。そんな中、高校時代の友人の結婚式が近づき、二人はかつての自分たちの深い関係と秘密とに改めて向き合うことになる。そして……?
一番近くにいるのに、わかり合えない二人。なのにもかかわらず、寄り添う二人。
愛と性、心と体の狭間で揺れ動く孤独な心象風景を、瑞々しい文体で描き出す、第40回すばる文学賞受賞作。

 

10年ぶりの再会からなぜか一緒に暮らすことになってしまった千景とまゆ子。読み進めていくと、高校生の頃に二人がつきあっていたと思わせる言葉が並び、読者を戸惑わせ、終盤には想像もしていなかった場所へ連れて行ってくれる。デビュー作にして傑作。

 

エピソードの一つ一つがこのタイトルのためにあるように思えてならない。人間という個体に生まれてしまった以上嫌でも性別を持たなければならないことや、大好きなのに性愛に結びつかないまま相手を傷つけてしまうことのままならなさ、生きづらさを突きつけられたような。

 

 

性的マイノリティーを題材にした作品がここ2、3年で増えている印象ですが、LGBTQの単語でくくるのもどうなんでしょうね。世の中が推奨する恋愛にも、LGBTQにも該当しない、境界や制約を排除した触れ合いを描いた作品がもっと書かれるべきだと思いますし、本作はその条件を満たしています。

 

そういう生き物

そういう生き物

 

 

 

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『男も女もフェミニストでなきゃ』

わたしはハッピー・フェミニスト!
ビヨンセを始め全米が称賛したTEDスピーチ、待望の邦訳!
ディオールのパリコレでも同名ロゴTシャツが登場、話題沸騰中。
あたらしいジェンダーについて最適の1冊(Amazonより)

 

TEDxEustonというプレゼンイベントで行われた、ナイジェリア作家によるトークをまとめた本。フェミニズムという考え方の入り口に最適だとおもいます。
西加奈子さんの帯も素敵です。

 

あらゆるボーダーを越えて皆の心にするりと入り込み、皆を心から笑わせ、
くつろがせ、でも絶対に革新となる言葉を逃さず、
皆に「心から考える」ことを促すことができる彼女に、私は10代の少女みたいに夢中になった。

(本書帯より引用)

 

この本についてまずツイッターでツイートしたのですが、結構勇気が必要でした。「フェミニスト」という言葉は、一部の人には攻撃的に感じるみたいで、フォロワーさんが減ったり、ミュートされたりするかもなあ、と思ったのが正直な気持ちですが、素晴らしい本なので紹介させてもらいました。

 

ここ数年、アメリカやイギリスの若者のトレンドになりつつあるフェミニズムという考え方が、日本では特に忌避されている問題については、いろいろ思うところがあるけれど、まずみんなにこの本を読んで欲しい。男の人も女の人も、性別にとらわれたくない人も、全員が悩んでいることの1つの答えが書いてあるはずだから。

 

作者は、全員がハッピーになるために考える力を私達に見せてくれます。

 

男も女もみんなフェミニストでなきゃ

男も女もみんなフェミニストでなきゃ